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 『大人の入塾希望者」 〜今までに対応してきた生徒より〜 





昨日の4時頃、
「少し、お時間宜しいでしょうか?」
と来校された男性。

一見して、
「息子が入塾をしたい
」或いは、
「娘が・・・」
という雰囲気ではなさそうな感じ。


「はい。大丈夫ですよ。」
と応対をすると、
「実は、お恥ずかしい話、私がここの塾で学ばせて頂きたいと思いまして・・・。」
ということ。

「そうですか。まぁ、立ち話も何ですので、宜しければこちらへどうぞ。」
と、スリッパを出し、受付のカウンターへお通しする。

「いや、誠に申し訳ありません。」
と、とても平身低頭な態度を取っていらっしゃる方。


取り合えず、お話しをお伺いすることにした。





30分ほどお話を伺っただろうか。


その中でボクから見えてきたポイントを挙げると、

・今、求職中である
・昔は営業の仕事をしていたが、ノルマが果たせずに辞めてしまった
・ここの塾で、興味のある日本史と英語を勉強したい

ということだろうか。

ちょっと「あれ?」と思ったのは、
「塾に入るかどうかは、『親』と相談して決めます。」
と言う言葉。

「誠に失礼ですが、ご両親はおいくつでいらっしゃるのですか。」


「ええ、去年、教職を定年致しました。その年金で、塾に行かせていただける様に、話してみます。」
ということ。


う〜ん、どうなんだろうか・・・?


「塾」という経営面で考えれば、1人でも生徒が増えることは、喜ばしいことだとは思う。

しかし、小中高生が混じる中で、この「おじさん」が、「生徒」として勉強している風景は、ちょっとまだ、「違和感」を持たれるかも知れない・・・。


それに、「求職中」とは言え、
『親の年金』を充てにして、40歳(半ば?)の方が塾に行くなどとは、ちょっと余りにも自立してなさすぎるのではないかと思った。


ボクはボクなりの「回答」を、この「目の前に座っていらっしゃる方」(以下、Aさんとします)に提示しなければならない。

どう、表現しようか・・・。





「あの、すみません。
私などがこのようなことを申し上げるのは、失礼かも知れませんが、
あの、折角、こちらへ来て頂いたことに甘えまして、少しだけご意見させて頂きますね。

きつい言葉になったら、ごめんなさい。」


「あ、いえいえ、何でも仰ってください。」


「そうですか。じゃあ、遠慮なく。(笑) 
ははは、いえいえ。(笑)

えっと、まず、こちらの塾に来て下さることに関しては、全く私としては問題としていません。
向学心のある方であれば、どなたでも指導をさせて頂こうと思っております。


だた、こちらの塾(私がフイユに携わる前の塾)は、いわゆる『受験の対策』の塾です。
中学受験、高校受験、大学受験、あとは、検定などもそうなのですが、ある程度『ゴール』が共有できる範囲で、指導の方をさせて頂いています。


先ほどから、お話しを伺っている中で、こちらの塾をご利用されて、
Aさんが今後、どのようにされたいのか、ということが余り見えて来ないのです。

こちらで日本史を勉強されたとしても、それを使って『センター試験』を受験されるおつもりではないですよね?」


「いえいえ。(笑) そんなつもりはないです。はい。」


「はい。(笑) では、英語を勉強された後は、どういう風にお考えですか?」


「・・・まだ、分かりません。」


「あの、言葉が過ぎたら、ごめんなさい。

もしかしたら、Aさんは、『塾に行って勉強をしている』ということを、ご両親やご兄弟の方から、色々言われることへの、『かくれみの』と言いますか、『言い訳』にしようとされていらっしゃるのではないか、と私は思うのです。

周囲の方の意見や、ご自身が、『何もしていない』という重圧に耐え切れずに、
『とりあえず、勉強でもしてみようか』
と、安易にこちらへ来られたのかも知れません。

どう思われますか?」


「う〜ん・・・。そうですね・・・。」


「それはそれでも構いません。

しかし、私が思いますに、今、Aさんの必要なのは、
『少し落ち着いて、ご自身の頭と心の中身を整理すること』
だと思います。

営業の仕事が向いておられないのであれば、製造の仕事もありますし、農業も素晴らしい仕事だと思います。

営業の仕事をされていた過去が、『失敗』ではないんです。
ご自身に営業が向いていない、ということが分かっただけでも、良かったじゃないですか。


ですから、まずは、ご自身でアルバイトでも何でも構いませんので、働いて稼いだお金で、塾に来てやってください。営業以外の仕事でも、沢山あると思います。

そして、それは、『適職』として、『お金のため』と割り切ってお働きになったら構わないと思います。

『天職』という、ご自身の心が喜ぶことは、また、その後に、別にお探しになれば良いと思うのです。」


「そうですね・・・。やっぱり働かないとダメですよね・・・。」


「はい。そう思います。
ですから、塾に来る、来ないは、そんなに急いで結論を出さなくても構いませんよ。

まずは、ご自身の中でしっかりとお考えになって、必要であれば、ノートなどに書き出してみて、頭を整理してみてください。

その上で、ご自身の目標が明確になった上で、こちらで英語を学びたいとか、歴史を学びたいと思われるのであれば、それは喜んでお手伝いをさせて頂きます。

どうですか?」


「はい、では、もう少し考えてみます。
本当にたまたま入ったところで、このように丁寧な対応をして頂けるとは・・・。

ありがとうございます。」


「いえいえ、とんでもないです。
お困りごとがあれば、お昼であればご相談にも乗らせて頂きます。
夜は、私も授業に入ることがありますので。」(笑)


「そうですか・・・。
あなたのような方に、もう少し早く会っておきたかったです。
それでは、本当にありがとうございました。
失礼致します。」


と深々とお辞儀をされて、お帰りになられた。

嬉しさもあるが、一抹の寂しさもあった。





これもまた「必然」なのだろう。

Aさんは、きっと「自信」を付けたかったのだろうと思う。

「勉強」という、自分がやったらやった分だけは成長して、成功体験が得やすい分野。
ご両親が「学校の先生」ということもあってだろうが、色々と「比較」もされてきたに違いない。

そこに身をおくことで、
「やったら出来る自分」
を取り戻したかったのだろうと思う。


しかし、「社会」では、その通りにはいかないこともある。

自分がやっても、自分だけが頑張っても、
周囲との調和が取れていなければ、それは「結果」が出ないところだ。


「良い悪い」という責任をどこかに求める議論ではなく、Aさんは、そういう時期を今、迎えていらっしゃるということ。

そして、それもまた、「私」の映し鏡なのだから・・・。

ボクも、今のこの「仕事」を取り上げられたら、「自信」を持って歩いていけるだろうか。



それを考える機会を下さったAさんに感謝をしたい。

そして、Aさんが1日も早く、社会に復帰されて、ご自身の心の光を感じて下さいます様に、心から祈りたい。





子ども達の解いたノート


   

   

   


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